メールマガジンとして配信された文章)

おはようございます。ラピシュットの長谷川高士です。

放送大学の卒業研究を進めています。

1週間の準備・調整期間を経て、昨日よりアンケートの実査が始まりました。

見込みでは3日間程度で予定の回答数が得られるとのことです。

その後は、いよいよ分析に入ります。

今日のコンテンツは、リッカート項目(尺度)その2、です。

先週から、質問項目に対する回答者の意識や態度の程度を段階的に評価する形式の選択肢群である「リッカート項目」について書いています。

例によって、先週のおさらいをしましょう。

ある質問に対して、賛成と反対など対極関係にある選択肢を両端に配置し、その意見の強さを段階的に評価する形式の選択肢群のことを「リッカート項目」と呼びます。

先週の気づきとして、次の2つをリッカート項目の特徴としてまとめました。

(リッカート項目では)

  • できるだけ等間隔になるよう語を選定する
  • 中立肢の有無の使い分けには慎重さが必要

2つ目の特徴である中立肢の有無とは、すなわち選択肢の数が4つに代表される偶数であるか5つに代表される奇数であるか、ということです。

奇数であれば、
「どちらともいえない」
という中立的な選択肢が中央に配置されます。

この中立肢が、回答データの分布や回答者の選択行動に影響を与えることが分かっています。

中立肢がないと、本来中立に集まっていたはずの回答が両極へ完全な均等として分散するとは限らず、場合によっては否定的な方向に偏って増える傾向が報告されています。

これは、中立回答ができない状況では
「曖昧な態度の回答者が消極的な選択肢に流れやすい」
ことを意味しています。

一方、中立肢があることで、
「本音をぼかした回答」
が増えるリスクも指摘されています。

リッカート項目において、選択肢を4つとする場合を4件法、5つとする場合を5件法と呼びます。

今週はこの続きとして、4件法、5件法それぞれの長短所の検討から始めたいと思います。

4件法の長短所

中立肢を持たない4件法には、次のような長所と短所があります。

■4件法の長所

1)回答の方向性が明確になる

  • どちらか寄りの回答を強制的に選ばせることから、全体として賛成または反対、ポジティブまたはネガティブの傾向をはっきりと捉えやすい。
  • 中立回答に多数が集中して「どちらともいえない、という人ばかり」という事態を避けられることから、白黒が付いた明確な分析結果を得やすい。

2)中立肢濫用の抑止

  • 回答者が「どちらともいえない」を安易に選ぶことを避けられることから、思考放棄的な(単に、判断を留保したいだけ)の中立選択を減らせる可能性がある。
  • その結果、回答者に自らの態度をより慎重に吟味させる効果を期待でき、得られたデータの解釈もしやすくなる。

■4件法の短所

1)中立的な意見を拾えない

  • 中立肢がないことから、真に中間的な意見を持つ回答者の割合を把握できず、中立層の存在をデータ上で表現できない。
  • 調査によっては、このことが重要な情報を見落とすおそれにつながり得る。

2)回答者に負担を強いるおそれ

  • しっくりこない候補の中から「無理に選ばなければならない」というストレスを、自らの考えが中間寄りである人に与えるおそれがある。
  • その結果、迷いや不満が生じ、回答精度の低下(いい加減な選択)や無回答の増加を招きやすくなる。

3)回答が偏るリスク

  • 中立肢を外すことで、回答傾向が偏ってしまうリスクもある。
  • 先述のように、中立を除いたことで否定寄りの回答が増えるケースが報告されている。

5件法の長短所

中立肢を持つ5件法には、次のような長所と短所があります。

■5件法の長所

1)回答者が選択肢を選びやすい

  • 中立肢が用意されていることで「自分の考えに当てはまる選択肢がない」という状況が減り、誰もが回答しやすい設問になる。

2)中間層のデータを収集できる

  • 回答者の中には評価が文字通り中間の人や、関心や判断がつかず中立を選ぶ人がいる。
  • こうした「どちらともいえない層」の割合をデータとして把握できることから、重要な洞察が得られる可能性がある。
  • 例えば中立回答者が少なければ、対象について明確な意見を持つ人が多い、と分かり、逆に多ければ、態度未定や無関心な層が多いことを推定できる。

3)信頼性や妥当性の向上の可能性

  • 選択肢が(4件法よりも)多くなることで、尺度の信頼性が向上したり、予測的妥当性が高まる傾向が報告されている。
  • 自身の感じ方に近い選択肢を選べる分だけ、測定精度が上がる可能性がある。

■5件法の短所

1)中立選択肢への集中

  • 中立回答が多くなりすぎるおそれがある。
  • 特に日本人のように慎重であり「どちらともいえない」を選びがちな傾向がある集団では、中立回答が過半数を占めてしまい、データ解釈が困難になるケースもある。

2)回答の質のばらつき

  • 中立肢があることで本来は意見を持っているにもかかわらず、「面倒だから中立を選ぶ」といった回答が混入しやすくなる。
  • 人は認知的負担を避けたい時や自分の本当の意見を明かしたくない時に、中立を選ぶことがあるとする研究がある。
  • 結果として、収集したデータにノイズが混じることで、真の傾向を読み取りづらくなるおそれがある。

3)項目ごとの安定性低下

  • 中立肢を含めると、「個々の項目の安定性(再現性)が、やや低下する」という指摘がある。
  • 中立肢とその他の選択肢とは、時間経過や状況によって互いを行き来しやすい関係性にある。
  • このことは、回答者の一貫した態度を測定する上ではネガティブに働く。
  • ただし、複数項目による尺度全体としては、中立肢の存在により信頼性が損なわれることは少ない。

4件法、5件法の目的に応じた使い分け

前章のとおり、4件法と5件法とは一方の長所の裏返しが他方の短所である、という二律背反の関係にあります。

つまり、4件法と5件法は、
「常にどちらか一方が優れている」
とは言えないのです。

■4件法が有効な場合

例えば、心理測定において被験者が曖昧な態度を取る余地を減らし、積極的に態度を表明させたいなら4件法が有用でしょう。

あるいは、消費者行動における商品満足度のように中間回答が多発しがちな設問では、あえて4件法を用いて満足か不満かをはっきりと聞き取ることで、傾向を掴みやすくなる場合があります。

■5件法が有効な場合

社会意識や政治的態度の世論調査では、中立的立場や無関心層の規模自体が分析上で重要な意味を持つことが多く、5件法で「どちらともいえない」を計測する意義が大きいと言えます。

あるいはブランド認知度のように興味関心が薄い層を把握したい場合にも、5件法で中立層の存在を見える化することが有益でしょう。

■その他の視点

回答者が年少者の場合には、選択肢が少ない、すなわち4件法の方が、認知的負荷が少ないことから、回答が安定する可能性があります。

■まとめ

繰り返しになりますが、4件法と5件法の長所は互いに二律背反の関係にあります。

「白黒はっきりさせたい」という場合に4件法は有効ですが、中間の声を捨てることになます。

対して5件法は、中立意見を汲み取れる代わりにデータが散漫になる恐れがあります。

よって、4件法と5件法は、調査の目的や対象に応じて適切に使い分けることが大切です。

今回の調査でも、設問ごとの目的に応じて4件法と5件法の選択を慎重に吟味しました。

◇今日の気づき

4件法と5件法とは二律背反の関係にある
4件法と5件法は目的に応じて使い分ける

◇この文章の入口(参考)

実務の選択(右下)から、整理の言葉(右上)を経て、意味がほどける場所(左上)へ


この文章は、
判断や結論に入る手前の、話の地面を整える工程(lapi-schutto.jp/before-the-talk)に関わる中で書かれています。

この文章を読んで、

話が噛み合わない感触や結論に入る前の違和感

が残るときは、それを急いで解消しなくても構いません。

そのための場所を、別に置いています。

結論の前に