「話が噛み合わない」と感じる場面は、仕事でも、家庭でも、組織でも、決して珍しいものではありません。

  • 相手が間違っているように見える
  • 自分の説明が悪かったのかもしれない
  • もう一度話せば分かるはずだ

そう考えながら話を続けても、なぜか同じところを行き来してしまう。

結論に近づくほど、かえって噛み合わなくなる。

このページでは、その状態を「解決」しようとはしません。

まずは、「話が噛み合わない」ときに、何が起きているのか。

その構造だけを、静かに整理します。

「話が噛み合わない」という状態は一つではない

ひとくちに「話が噛み合わない」と言っても、実際にはいくつかの異なる状態が混じっています。

たとえば、

  • 情報や事実は共有されているのに、判断に進めない
  • 正しさが複数あり、どれも間違っていない
  • 決めたい人と、まだ考えたい人が同じ場にいる
  • 言葉は交わされているが、期待しているものが違う

これらはすべて、「話が噛み合わない」と表現されがちですが、原因も、必要な工程も同じではありません。

判断や結論が早すぎることがある

多くの場面で起きているのは、誰かの能力不足や理解力の問題ではありません。

判断や結論に入ること自体は、必要です。
問題は、それが早すぎるときに生じます。

前提にしている情報。
言葉にされていない期待。
立場による責任の違い。

こうしたものが揃わないまま話が進むと、判断はできているように見えて、実際には同じ場所を回り続けることになります。

それでも、決めなければならない場面がある

とはいえ現実には、いつまでも話し合っていられるわけではありません。

  • ビジネスの現場
  • 組織の意思決定
  • 親子間の承継
  • 当事者性に差がある関係

こうした場では、話が噛み合わないままでも、何らかの判断を迫られることがあります。

そのとき、「正しい答えを探す」ことよりも前に、

どこで言葉がすれ違っているのか

を一度扱えるかどうかが、後々の疲弊を大きく左右します。

判断を急がせる「場の圧力」

話が噛み合わない場面では、当事者同士の関係だけでなく、その場にかかっている圧力が判断を早めていることがあります。

例えば、

  • 期限が決まっている
  • 誰かが責任を負わなければならない
  • 周囲から結論を求められている
  • これ以上、話し合う余裕がないと感じている

こうした状況では、「話を整理する」よりも先に

「とにかく決める」

ことが暗黙の前提になりがちです。

このとき、話が噛み合わなくなる原因は、意見の違いそのものではありません。

話す速度と、考える速度が揃っていない。

それだけのことも多くあります。

情報は合っているのに、噛み合わないとき

話が噛み合わないという感覚は、必ずしも感情的な対立から生まれるわけではありません。

むしろ、

  • 数字や事実は共有されている
  • 課題も把握できている
  • 各自が真剣に考えている

にも拘わらず決まらない、という場面は少なくありません。

このような場合、問題は「何を言っているか」ではなく、

何を前提として話しているか

に多くの場合あります。

誰かは「決定」を踏まえて話をしている。
別の誰かは「検討」を前提に話している。
また別の誰かは「責任の所在」を気にしている――。

前提が揃わないまま言葉を重ねると、内容は合っていても、話は噛み合っていない感覚だけが残ります。

情緒が扱われないまま、話が進むとき

話が噛み合わない場面では、情報や意見だけでなく、期待や不安といった情緒も同時に場に置かれています。

ただし、その情緒は、言葉として表現されるとは限りません。

「ちゃんと分かってほしい」
「軽く扱われたくない」
「責任を押し付けられたくない」

そうした感覚が、明示されないまま残っていることがあります。

すると、表面上は冷静に話していても、どこかで噛み合っていない感覚だけが残ります。

誰かが論点を整理しても、
誰かが正論を述べても、

その違和感は消えません。

それは、意見が対立しているからではなく、

期待しているあり方が、互いに共有されていない

という状態だからです。

このとき、情緒を「ケアする」必要はありません。

ただ、

「そこに何らかの期待や不安が置き去りになっている可能性がある」

という事実に気づけるかどうか。

それだけで、話の進み方が変わることがあります。

噛み合わなさは、失敗ではない

「話が噛み合わない」と感じると、つい、それを避けるべき状態や、解消すべき問題として捉えてしまいがちです。

けれど、噛み合わなさが生じること自体は、異常でも、失敗でもありません。

それは、まだ扱われていない前提が残っている、というサインでもあります。

その前提に触れずに判断を重ねると、一時的には決まったように見えても、後から同じところで立ち止まることになります。

このページが目指している位置

このページは、これまで見てきた話の噛み合わなさを、「解消」することを直ちに目指してはいません。

まず、何が噛み合っていないのか。
どこに揃っていない前提があるのか。

その状態を、急がずに眺められる場所として、ここに置いています。

それだけでも、判断の仕方は少し変わります。

このページが扱わないこと

ここまで読んで、具体的な対処法や会話術を探していた方もいるかもしれません。

このページでは、次のことは扱いません。

  • 相手を説得する方法
  • 正しい伝え方の型
  • すぐに使える解決策

もちろん、これらは無意味ではありません。

ただ、話が噛み合わないままでこれらを使った結果、

返って状況がこじれた

という場面を何度も見てきました。

だから、このページでは状態の整理だけを行っています。

これは、信条や考え方を示したい話ではありません。

私自身が立ち会ってきた場で、判断の前に飛ばされがちで、しかも壊れやすかった工程に、あらためて向けている注意なのです。

ここで終わっても構いません

ここまで読んで、

「自分は今、この状態に近いかもしれない」

そう感じられたのなら、このページはここで閉じても構いません。

答えを出さなくても、
行動を決めなくても、

何も取りこぼしてはいません。

状態を一度言葉にできただけでも、次に選ぶものは変わります。

立ち止まるための場所

もし、「判断に入る前の工程」について、もう少し言葉を見てみたい、と感じたら、別のページにその話を書いています。

判断に入る前の工程について、もう少しだけ書いています。

なぜ結論を急がないのか

こうした場に、これまでどう関わってきたかを残しています。

立ち会ってきた場

無理に進む必要はありません。

必要だと感じたときにだけ、辿ってください。

(補足)

「話が噛み合わない」と感じること自体は、失敗でも、能力の問題でもありません。

多くの場合、

まだ扱われていない工程が残っている。

それだけのことです。