交渉や折衝の場で、
こちらは丁寧に説明しているつもりなのに、
なぜか話が前に進まない。
一方で、特別な説得をしていないのに、
自然と話が噛み合い、次の展開に進むこともある。
この違いは、話術や経験値だけで説明できるものではありません。
多くの場合、話が始まる前の工程に違いがあります。
このページでは、
交渉や折衝の場で実際に行っている工程
を、そのまま言葉にしています。
交渉術やテクニックの紹介ではありません。
話が噛み合わないときに起きていること
話が噛み合わないと感じる場面では、しばしば次のような状態が起きています。
- 相手がどこまで知っているかを確認しないまま話を始めている
- 相手とこちらで、暗黙の前提が異なっている
- 「当然共有されているはず」という前提がズレたまま進んでいる
その結果、説明は増えるのに理解は進まず、
結論を急げば急ぐほど、違和感はより大きくなります。
話を始める前に行っていること
交渉や折衝に入る前に、
まず相手が持っている前提を、次のように調査し、予想します。
- このテーマについて、どの程度の情報を持っているだろうか
- どこまでを前提として話そうとしているだろうか
- どの部分に関心や不安があるだろうか
ここで重要なのは、正確ではありません。
前提を想像しようとしているか
ということです。
予想を元に、質問しながら話す
調査し、予想した結果を、全て直ちに前提とすることはできません。
必ず、相手に質問をして確かめます。
「この点については、どこまで共有されていますか」
「ここまでの背景はご存じでしょうか」
質問の目的は、相手を試すことではありません。
こちらの予想が合っているかを確認するためです。
足りなければ、その場で補う
質問を通して、
- 相手が知らなかったこと
- こちらが想像していたより(相手の)理解が深くなかったこと
が分かった場合は、その場で前提を補います。
また、こちらが持っている情報のうち、
- 相手が知っているかどうか不明なもの
- 知っている前提で話を進めると誤解が生じそうなもの
については、いきなり説明しません。
「この点はすでに共有されていますか」
と確認し、必要な場合にのみ開示します。
予想が外れていたら、組み立てを変える
話を進める中で、
- 事前の調査が不足していた
- 相手の前提を誤って捉えていた
と分かることもあります。
その場合は、無理に話を続けません。
その場で認識を更新し、次の話の組み立てを変えます。
当初の想定に固執しないことが、
話が噛み合う状態を保つ上で、重要です。
この工程が扱っているもの
この工程が扱っているのは、
- 相手を説得する方法
- 交渉を有利に進めるテクニック
では、ありません。
扱っているのは、
どの前提の上で話が進んでいるのか
という、話の地面です。
前提が揃っていないままで結論に入ろうとすると、
後でどれだけ説明を増やしても、条件を調整しても、
噛み合わなさが残り続けます。
ここで終わっても構いません
もし、ここまで読んで、
「自分も、前提を確かめずに話を進めていたかもしれない」
「相手が知っていると思い込んで説明していたかもしれない」
そう感じたなら、このページはここで閉じても構いません。
すぐに交渉のやり方を変えなくても、
何かを言い足さなくても、
前提に目が向いただけで、次の話は少し変わります。
この工程は、結論を出すためのものではありません。
交渉や折衝で、話が噛み合う状態を保つための、
話が始まる前の工程です。
立ち止まるための場所
もし、「話が始まる前の工程」について、もう少し言葉を見てみたい、と感じたら、別のページにその話を書いています。
立場のズレが前提をズラす場面も、判断の前の状態です。
立ち位置のズレは、話の地面として現れます。
無理に進む必要はありません。
必要だと感じたときにだけ、辿ってください。
(補足)
「話が噛み合わない」と感じること自体は、失敗でも、能力の問題でもありません。
多くの場合、
まだ扱われていない工程が残っている。
それだけのことです。

