「もう決まった話だと思っていたのに、後から蒸し返された」
「いや、あれは仮のつもりだった」
会議や打ち合わせ、プロジェクトの進行、あるいは日常の話し合いの中で、
このような行き違いを感じた経験はないでしょうか。
審議の際には大きな反対もなく、
話は前に進んだように見えていた。
議事録にも「決定事項」と書かれ、次の工程に進んだはずだった。
なのに時間が経つと、
「最終決定だとは思っていなかった」
「一旦そうしよう、という意味だった」
「状況が変わったから、もう一度考えたい」
といった言葉が出てきて、話が戻される。
このとき多くの場合、
合意の基準が揃わないまま進んでしまった
という状態が起きています。
このページでは、
誰かの優柔不断さや無責任さの問題、という単純な話ではなく、
話し合いの場面で、合意基準がどのように扱われているか
という工程に目を向けています。
合意には「基準」がある
合意や決定の取り扱いは、
「決まった/決まっていない」
という単純な二択になるとは限りません。
たとえば次のように
- 数字や条件が揃えば決まったと見なす人
- 全員が納得したら決まったと感じる人
- 上位者が承認した時点で決まったと思う人
など、同じ「決まった」という言葉を使っていても、
何をもって合意とするかの基準
が、人によって違うことがあります。
その違いが言葉にされないまま話が進むと、
- ある人にとっては「もう決まった話」
- 別の人にとっては「まだ検討段階」
という異なる状態が同時に存在してしまいます。
ここで起きているのは、
合意と呼ぶための基準そのもののズレ
なのです。
仮決めと本決めが混線する瞬間
合意基準にズレがある場では、
仮決めと本決めの境目が曖昧になります。
- 方向性を共有しただけなのか
- 条件付きで進めてよい、という意味なのか
これらが区別されないまま、
「決まりました」
という一言だけが先に置かれる。
結果として、
- 「どこまで決めたつもりか」が人によって違う
- 「決まった/決まっていない」の認識が分かれる
- 後で蒸し返しが起きる
という状態が生まれます。
蒸し返しが生む、別の問題
一度「決まった」と認識された話が再び戻されると、
場の空気は重くなります。
「今さら?」
「それなら、なぜあのとき言わなかったのか」
こうした感情が前に出てしまい、
本来確認すべきだった前提に戻りづらくなるかもしれません。
一方で、蒸し返す側にも理由や言い分があるでしょう。
- 決めきれない要素がまだ残っていた
- 状況が変わる可能性を見ていた
- 先に進むための“仮置き”だと思っていた
それぞれの中では、筋が通っている。
けれども、
その基準が共有されていなかった。
ただ、それだけなのです。
このページが扱っている工程
このタイプの噛み合わなさが起きる場では、
次の工程が飛ばされがちです。
「いまの合意は、何をもって“決まった”と呼んでいるのか」
「この場では、どの基準を満たしたら本決めになるのか」
決めるか、決めないか。
進むか、止まるか。
その前に、
合意の基準そのものを揃える時間
が、本当は必要だったのです。
このページで扱っているのは、
- 蒸し返しを防ぐテクニック
- 決断力を高める方法
ではありません。
「合意基準がズレたまま進むと、なぜ話が噛み合わなくなるのか」
その状態を、いったん言葉にして眺めるための工程です。
ここで急がなくてもよい
ここまで読んで、
「いま関わっている場が、まさにこの状態かもしれない」
そう感じたなら、ここで立ち止まっても構いません。
すぐに決め直さなくてもいい。
行動を変えなくてもいい。
ただ、
「自分は何をもって“合意した”と感じているのか」
という問いを場に戻すだけでも、
次に起きる話の進み方は、少し変わります。
立ち止まるための場所
もし、「話が始まる前の工程」について、もう少し言葉を見てみたい、と感じたら、別のページにその話を書いています。
このズレは、結論の前に扱われるべき工程の一つです。
このような状態は、複数の場面で観察されます。
無理に進む必要はありません。
必要だと感じたときにだけ、辿ってください。
(補足)
「話が噛み合わない」と感じること自体は、失敗でも、能力の問題でもありません。
多くの場合、
まだ扱われていない工程が残っている。
それだけのことです。

