話している内容は、決して的外れではない。
言葉も荒れていないし、相手を否定しているつもりもない。
それなのに、どこか話が進まない。
「伝わっているはずなのに、通じていない」感覚が残る。
そんな場面を経験したことはないでしょうか。
このようなとき、問題は、
意見の違いや説明不足
にあるとは限りません。
このページで扱うのは、
関係性についての前提が共有されないまま
話が進んでいる状態です。
“関係性の前提”とは何か
関係性の前提とは、たとえば次のようなものです。
- 今は「近い関係」なのか「距離のある関係」なのか
- 互いをどこまで信頼している前提で話しているか
- 上下・対等などの立場や役割分担、の認識は揃っているか
これらは、通常
会話の中で明示されない
ことの方が多い。
しかし、関係性の前提が揃っていないまま話が進むと、
内容以前のところでのズレ
が生じます。
近さ・遠さの認識が異なるとき
一方は「かなり近い関係」だと思っている。
他方は「仕事上の距離感」だと思っている。
この状態で両者が話すと、
- 踏み込んだ発言が、唐突に感じられる
- 配慮したつもりの距離が、冷たく受け取られる
といったことが起こります。
ここで起きている問題は、
無礼や配慮不足ということではありません。
関係の近さ・遠さについての
前提が共有されていないだけ
というケースが多くあるのです。
信頼の前提が揃っていない
「信頼している/されている」という感覚も、
人によって大きく異ることがあります。
- 長く一緒にやってきたから、信頼を前提にして良いと思っている
- 立場や役割が変わったので、信頼ついても更新が必要だと思っている
こうした違いもやはり、
普段の会話では表に出にくいものでしょう。
ところが、
- 判断を委ねる場面
- 責任の所在が問われる場面
になると、このズレの影響で、急に話が噛み合わなくなる。
これは不信感ではなく、
信頼をどこまで前提にしているか、が揃っていない
という状態だと捉えることができます。
親しさ・上下・対等が混在する場
関係性の前提のズレが複雑になりやすいのは、
- 親しい間柄
- 上下関係
- 対等な立場
などが、同時に存在する場面です。
典型的な場面の一つに「親子間の事業承継」があります。
「家族として」
「経営者として」
「後継者として」
親も子も、互いが
「今どの前提で話しているか」を共有しないまま話を重ねている
ということが少なくありません。
結果として、話の中身ではなく、
関係性の前提そのものが噛み合っていない
という状態になります。
長い関係ほど、確認しづらい
関係が長ければ長いほど、
- 今さら聞けない
- 分かっているはずだ
- 言葉にすると角が立つ
と感じやすくなります。
ゆえに関係性の前提のズレは、
修正されないまま積み重なっていきます。
そしてある時点で、
「なぜか話が噛み合わない」
という状態として表面化するのです。
ここで無理に整えなくてもよい
このページは、
- 関係性を修復する方法
- 距離感を揃える技術
- 信頼を回復する手順
を提示するものではありません。
まず、話が噛み合わない原因が、
内容ではなく関係性の前提にある可能性
に気づけるだけで、場の見え方は変わります。
今すぐに距離を詰め直したり、
関係を定義し直したりする必要はありません。
ただ、
「今、どの関係性の前提で話しているのだろうか」
という問いを、一度手元に置いておく。
それだけで、
話が壊れにくくなる場面は確かにあります。
ここまで読んで、
「今まさに、この状態かもしれない」
と感じたなら、このページはここで閉じても構いません。
関係性の前提に目が向いた状態であれば、
それ以上の判断を、必ずしも急ぐことはありません。
立ち止まるための場所
もし、「話が始まる前の工程」について、もう少し言葉を見てみたい、と感じたら、別のページにその話を書いています。
このズレは、結論の前に扱われるべき工程の一つです。
このような状態は、複数の場面で観察されます。
無理に進む必要はありません。
必要だと感じたときにだけ、辿ってください。
(補足)
「話が噛み合わない」と感じること自体は、失敗でも、能力の問題でもありません。
多くの場合、
まだ扱われていない工程が残っている。
それだけのことです。

