メールマガジンとして配信された文章)

おはようございます。ラピシュットの長谷川高士です。

5月8日、諮問機関である中央環境審議会は、「水道における水質基準等の見直しについて」という答申を環境大臣に提出しました。

今日のコンテンツは、PFASの水質基準化、です。

近年、注目が集まり、このメルマガでも複数回取り上げたPFAS(ピーファス)。

このたび諮問機関によって答申が提出され、令和8年4月1日から水質基準として、水道水中のその量がより厳格に管理される見込みとなりました。

今日はこのことをお知らせしつつ、1つずつ内容を確認しておくこととします。

所管官庁は環境省

2025年5月現在、水道行政の所管官庁は国土交通省と環境省です。

これは、2024(令和6)年4月にそれ以前の厚生労働省から移管された結果によるものです。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のような危機への対応能力を強化するための厚生労働省の組織の見直しの一環でした。

水道行政における国土交通省と環境省の事務分掌は、次のとおりです。

  • 環境省:水質基準の策定など、水道の水質又は衛生に関する事務
  • 国土交通省:環境省の所管事務以外の事務

というわけで、水質基準に関する水道行政の所管は環境省であり、今回の諮問機関による答申が環境大臣に対してなされたのもそのためです。

PFAS(ピーファス)とは

およそ1年前の2024年6月11日配信の第319号で取り上げたときは、
「そもそも、PFASとは?」
という見出しで詳細に解説をしました。

その後、環境省によって遅くとも2024年8月1日以前には、PFASに関するページがサイト上に作られ公開されていたようです。

そのページ内には「よくある質問」という項目が立てられています。

今回は、その内容を引用する形で、PFASの説明をしたいと思います。

■PFASとは何か

PFAS(通称ピーファス)とは、主に炭素とフッ素からなる化学物質で、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物のことを指します。分類の仕方によって数が異なりますが、PFASは1万種類以上の物質があるとされています。

■PFOS、PFOAとは何か

PFASの一種であるPFOS(ピーフォス)・PFOA(ピーフォア)は、様々な用途で使用されてきました。

(中略)

いずれも難分解性、高蓄積性、長距離移動性という性質を持つため、予防的な取組方法の考え方に立ち、PFOS・PFOAは、それぞれ2009年・2019年にPOPs条約対象物質に追加されました。これを受け、日本国内では、PFOS・PFOAをそれぞれ2010年・2021年に「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)の第一種特定化学物質に指定し、製造・輸入等を原則禁止しました。

このため、国内で新たに製造・輸入されることは原則ありませんが、主に過去様々な形で環境中に排出されたものが公共用水域(河川・湖沼・海域)や地下水等から検出されることがあります。また、PFOS等を含む泡消火薬剤を使った消火設備は、今でも市中に残っています。

これらのことを、あえて大雑把にまとめると次のようにできます。

  • ある特徴をもった化学物質であるPFASの内、その一部に製造と輸入を禁止されているものがあり、その略称をPFOSとPFOAという。

このPFOSとPFOAが水道水の材料となる原水に混入する恐れがあることが分かり、これを水道水の製造過程において、一定割合以下にまで確実に除去することを目的に、水質基準の見直しを求める答申が今回行われました。

水質基準と見直しの経緯

水質基準とは、水道により供給される水が満たすべき要件を定めたものです。

この内容は水道法の第4条に規定されていますが、同条は第2項で
「必要な事項は、環境省令で定める」
として、詳細の規定を省令に委任しています。

つまり、水質基準は環境大臣が決定するということです。

環境大臣は、専門家で構成される中央環境審議会に諮問し、これを受けて答申がなされました。

ちなみに諮問(しもん)とは、ある機関が他の機関や個人に意見や助言を求める行為であり、答申(とうしん)とは、求められた側が、その諮問に対して、意見や回答をまとめて提出することを言います。

今回の答申は、2025(令和7)年1月10日に出された諮問第626号「水道における水質基準等の見直しについて」に対するものでした。

諮問のきっかけは、内閣府食品安全委員会によって2024(令和6)年6月25日に、PFASの食品健康影響評価が公表されたことでした。

水質基準の見直し内容

中央環境審議会による答申、すなわち、水質基準の見直しの具体的な内容の概要は、次のとおりです。

  • PFOSとPFOAを水質基準の項目に加える
  • 上限値を両者の合算値で50ng/Lとする
  • 検査の頻度は3か月に1回以上を基本とする
  • 施行日を令和8年4月1日とする

答申のとおり、環境省令が改正され施行されれば、PFOSとPFOAの検査および管理が法令によって厳格に義務化されます。

仮に基準値を超えることがあれば、当該の水道水の供給は直ちに停止され、これに伴う危険を最小限度に押さえるための措置がとられることになります。

また検査結果は然るべき頻度で公表され、また求めれば最新の検査結果を照会できることが十分に期待できます。

住民の安心について言えば、
「解像度が一段階上がってクリアなる」
というような変化だと評価できます。

水道事業を運営する各自治体には、早急に準備を進め、検査の実施および公表を前倒してでも始めてもらいたいと願います。

◇今日のお知らせ

PFOSとPFOAが水質基準の項目に加わる
安心の解像度が一段階上がってクリアなる

◇引用・参考文献一覧

中央環境審議会(2025年5月8日)「水道における水質基準等の見直しについて(第1次答申)」
https://www.env.go.jp/content/000313544.pdf

環境省「有機フッ素化合物(PFAS)について」
https://www.env.go.jp/water/pfas.html

環境新聞(2025年5月21日)「水道のPFAS検査、来年4月から義務付け 「要検討PFAS」の知見収集急ぐ 中環審が環境相に答申」
https://www.kankyo-news.co.jp/news/f4a78fcc-986c-43a8-876d-41053d1bf3ef

内閣府食品安全委員会(2024年6月25日)「有機フッ素化合物(PFAS)の食品健康影響評価について」
https://www.fsc.go.jp/osirase/pfas_health_assessment.data/pfas_hyoukagaiyou.pdf

名倉良雄(2024年1月)「水道行政の移管について」
https://www.jswe.or.jp/event/seminars/pdf/69se_yosi.pdf?utm_source=chatgpt.com

◇編集後記

今回参照した中央環境審議会の答申文書の中に、次のような表現が使われていました。

これまで水質基準項目を測定するために必ずしも必要でなかった検査機器を用いて測定を行うことになる

この「必ずしも必要でない」という表現にモヤッとしてしまいます。

言いたいことは分かるし、何なら話し言葉では、私もしばしば使ってしまいます。

でも、文字にすると……うーん。

ここから先は憶測でしかありませんが、このモヤッと感の正体は、必要という言葉の使い方や受け止め方に由来するものだと考えられます。

  • そもそも「要る」自体が 「必ず」的な意味を内包している
    (ナント! 辞書の語釈に「必要」とある)
  • だから「必要」はすでに「頭痛が痛い」の状態である
  • 次第に「必要」の「必」は「要」の意味に吸収されつつある?
  • そして「必要でない」の「ない」に 「必ず」ではなく「要る」自体を否定しているニュアンスが生まれている(=「不要」)

というわけで、冒頭の文章は、(必要な場合もあったので)単に「必要でなかった」とすることに抵抗が働いてしまったものと思われます。

で、私の勝手な校正案は次のとおり。

  • 水質基準項目を測定するためにこれまでは必要とは限らなかった検査機器を用いて測定を行うことになる

うん、まあまあかな。

◇この文章の入口(参考)

制度や整理(右上)から、意味(左上)へ


この文章は、
判断や結論に入る手前の、話の地面に立ち戻る中で書かれています。

この文章を読んで、

話が噛み合わない感触や結論に入る前の違和感

が残るときは、それを急いで解消しなくても構いません。

そのための場所を、別に置いています。

結論の前に