メールマガジンとして配信された文章)

おはようございます。ラピシュットの長谷川高士です。

「熊本市が全国初水道マンホールカード発行」

こんなニュースを目にしました。

今日のコンテンツは、マンホール、です。

「熊本市が全国初水道マンホールカード発行」

この見出しを読んだだけで記事内容をほぼ完全に想像できる方は、かなり稀なのではないでしょうか。

興味を引きこそすれ、
「どの部分が全国初?」
「そもそもマンホールカードって何?」
など様々な疑問が浮かぶかもしれません。

今日は、メルマガ1本を使って、この疑問の解消にチャレンジします。

そもそもマンホールとは

そもそもマンホールとは何でしょうか。

「ナイター」や「サラリーマン」のようないわゆる和製英語とは異なり、マンホールは正しく発音すれば伝わる、いうなれば純正英語の1つです。

そこで、原語である "manhole" の意味を英英辞典で調べてみました。

■manhole
a hole in the surface of a road covered by a lid. It is used to examine underground pipes, wires etc.

この英語の語釈は、次のように和訳できます。

「道路の表面にある蓋で覆われた穴。地下のパイプやケーブルなどを調査するために使われる」

つまり、マンホールとは
「人が(その中に)入るための穴」
ということです。

ただし、ここで気を付けたいのは、
「穴(ホール)には大きく2つの意味がある」
という点です。

"hole" の英英辞典での語釈の1番目と2番目は、次のとおりです。

  1. an empty space in something solid
    (固体の中にある空きスペース)
    例:地面に穴を掘る
  2. a space in something solid that allows light or things to pass through
    (固体に空いている何かが通り抜けられるスペース)
    例:穴のあいた服

そして、マンホールのホールは 1)の意味であり、よってマンホールは「人が(その中に)入るために地面に掘られた(造られた)の穴」ということになります。

原語の語釈で、"in the surface of a road(道路の表面にある)" とあるため、2)の通り抜けられる穴だとつい思ってしまいがちですが、マンホールの本質からすれば 1)の意味なのです。

わが国の土木工事におけるマンホールの正式名称は「人孔(じんこう)」ですが、この人孔が指すものが、1)の穴(孔)を構成する構造物であることが何よりの証拠です。

なお原語の語釈のとおり、わが国でもマンホールの多くは道路の中にに造られています。

一方で、建物の敷地内にあるものもあり、マンホールの設置場所は道路とは限りません。

アレは、マンホールの“蓋(ふた)”

繰り返しますが、マンホールとは「人が(その中に)入るために地面に掘られた(造られた)の穴」のことです。

これは、「マンホール」と聞いて多くの方が思い浮かべるアレとは、おそらく異なるはずです。

そう、主に黒色で鉄製の円盤のようなアレです。

皆さんが思い浮かべるアレは、マンホールの蓋(ふた)です。

マンホールの実体は「地面に掘られた(造られた)穴」ですが、この蓋で塞がれているため、実体を目にすることなく、蓋だけが見えている状態です。

より正確さにこだわれば、
「蓋とその枠の表面が、主に道路などの地表面に姿を現している」
ということです。

おそらく私の邪推でしょうが、引用した英英辞典の "manhole" の語釈者も、同じ誤解にやや惑わされており、"hole" を 2)の意味に取り違えてしまったかもしれません。

「この誤解を解こう!」
などという無粋なことを言うつもりは毛頭ありません。

それはマンホールカードの取り組みに水を差すようなものだからです。

マンホールカードは真摯な社会活動

マンホールカードとは、マンホールの蓋が描かれたカードのことで、主に市町村が発行しています。

私もこれまでは、このことを薄らぼんやりと知っている程度でしたが、今回の執筆をきっかけにその取り組みについて詳しく学ぶことができました。

マンホールカードには、その取り組みを主導する団体があります。

下水道広報プラットホーム(以下「GKP」とします)です。

GKPの設立趣意の一部を引用します。

「時代の変化に下水道広報は追いついていないのではないか」との問題意識から、(中略)議論・検討を重ね「下水道界が一丸となって下水道の多様な価値を再確認し、国民それぞれの層に狙いを定めてお知らせする」ことにより、国民生活と地球環境の永続的な維持向上を確保する道筋が明示されています。

この提言をスタートラインと位置づけ、セクターを越えた下水道広報の中枢の一つとなる情報交流、連携の母体として「下水道広報プラットホーム」を設置するものであります。

うん、熱い。

なかなかに熱量を感じる趣意文です。

ちなみに、GKPのウェブサイトのトップページには、構造物としての人孔(マンホール)のイラストが掲載されています。

前章での文章による私の説明を直感的に理解するための参考になると思います。

https://www.gk-p.jp

このGKPが取り組むプロジェクトの1つがマンホールカード、というわけです。

このプロジェクトの趣旨についても、同じく引用して紹介します。

GKPは、世界に誇れる文化物である日本のマンホール蓋を国民の皆様に楽しく伝えるとともに、下水道への理解・関心を深めていただくためのコミュニケーションツール「マンホールカード」を、全国の地方公共団体と一緒に発行しています。

路上を飾るご当地ものとして、マンホール蓋が市民の関心を集める中、マンホールカードは今まで下水道を気に留めていなかった方には関心の入り口として、既にマンホール蓋に関心を寄せていただいている方には、蓋の先にある下水道の大切さをより深く理解していただくことを目的に誕生しました。

大きく2つある目的のうち、反響の大きさから、前者が着実にその成果を上げていることが分かります。

その一方で、設立の趣意に照らしたとき、より重要である後者の目的の達成が容易でないことは想像に難くありません。

前者の成果が後者の達成につながる工夫が見つかることを期待してやみません。

水道マンホールのカードが全国初

ここでおさらいをしておきましょう。

「熊本市が全国初水道マンホールカード発行」

この記事見出しの謎を解くことが、今日の目標でした。

ここまでの解説で、この目標の達成は8割程度できたのではないか、と自負しています。

残る疑問は、
「何が全国初なのか」
という点のみです。

お察しのとおり、
「カードに描かれているのが水道用のマンホールである」
という点が全国初、ということです。

全国初である理由、すなわち、これまで他の自治体が発行していなかった理由は、それなりに明白です。

それは
「(そもそも)水道用のマンホールは無いから」
です。

くどいほどに繰り返しますが、マンホール(人孔)とは「人が(その中に)入るために地面に掘られた(造られた)の穴(孔)」のことでした。

主に管で構成される水道設備(施設)においては、
「そのようなものが原則としてはない(割合が極小)」
ということです。

さらにいえば、マンホールカードは下水道の広報を目的とした団体であるGKPのプロジェクトであることから、下水道のマンホール蓋以外のものをカードに描くことを
「思い付きづらかったのではないか」
とも推測できます。

では、熊本市はカードに何を描いたのか。

それは、消火栓ボックスの蓋です。

今日は説明調子が続いているので、最小限度に留めて解説します。

  • 消火栓とは、埋設された水道管に直結した大型の蛇口で、消火活動に使用されます。
  • 消火栓ボックスとは消火栓が入った箱(穴)で、主に道路の中に造られてはいますが、人が入れるほどに大きくはありません。
  • 消火栓ボックスの蓋とは、文字どおりの意味です。かつては長方形が多かったのですが、現在の主流は円形であり、マンホール蓋と同じ形状です。

というわけで、水道マンホールカード発行についての熊本市の趣旨を、新聞記事を引用して紹介します。

市上下水道局によると、マンホールカードは全国で700超の自治体が計1100超の種類を発行しているが、いずれも下水道。

昨年11月に水道事業が100周年を迎えたことを受けて、あらためて水道の大切さなどを啓発しようと、水道の消火栓のふたをカード化して「マンホールカード」にした。

なるほどです。

マンホールカードから「水道の大切さの啓発」に如何につなげるか。

GKPと同じく、関心の入口が深い理解へとつながる工夫が見つかることを、強く期待します。

◇今日の気づき

マンホールとは、人が中に入るための穴
関心の入口が深い理解へとつながる工夫

◇引用・参考文献一覧

朝日新聞(2025年5月7日)「全国初水道マンホールカード 熊本市が25日から」
https://www.asahi.com/articles/AST563W3XT56TLVB00FM.html

下水道広報プラットホーム
https://www.gk-p.jp/

熊本市上下水道局(2025年3月24日)「全国初!!水道マンホールカード誕生!」
https://www.kumamoto-waterworks.jp/waterworks_article/37689/

◇この文章の入口(参考)

出来事(右下)から、概念の整理(左上)へ


この文章は、
判断や結論に入る手前の、話の地面に立ち戻る中で書かれています。

この文章を読んで、

話が噛み合わない感触や結論に入る前の違和感

が残るときは、それを急いで解消しなくても構いません。

そのための場所を、別に置いています。

結論の前に