メールマガジンとして配信された文章)

おはようございます。ラピシュットの長谷川高士です。

2025年3月17日、国土交通省があるガイドラインを発表しました。

タイトルは「災害時地下水利用ガイドライン ~災害用井戸・湧水の活用に向けて~ 」です。

先週は、井戸と法律について確認しました。

今日のコンテンツは、飲用井戸のガイドライン、です。

井戸と法律について確認した先週は、次の2つのことを気づきとしてまとめました。

  • 井戸そのものを規定する法律はない
  • 飲用井戸にはガイドラインがある

この2つ目にある「飲用井戸のガイドライン」について、今週はその内容を紐解きたいと思います。

まずは、ざっくりとおさらいから。

「飲用井戸等衛生対策要領の実施について」という標題の厚生省生活衛生局長通知が、昭和62年に発出されました。

同通知は、その後改正を繰り返し、最新は令和元年10月版です。

この通知は、その内容から、本文に明示こそないものの、技術的助言にあたることは明白です。

よって、この通知で示されている「飲用井戸等衛生対策要領」は、法的拘束力のないガイドラインだといえます。

このことは、平成16年発出の「要領の改正を知らせる通知」における次の記述からも明らかです。

(本要領を)飲用井戸等の衛生対策の指針として活用されたい。

というわけで、この「飲用井戸等衛生対策要領(以下「本要領」とします)」の中身を次章から読み解きます。

目的は、総合的な衛生の確保

まずは、目的から。

本要領から全文を引用します。

この要領は、有害物質等による地下水汚染等がみられることにかんがみ、飲用に供する井戸等及び他の水道から供給を受ける水を水源とし、水道法等で規制を受けない水道の適正管理、水質に関する定期的な検査、汚染時における措置及び汚染防止のための対策を定めることにより、これら井戸等について総合的な衛生の確保を図ることを目的とする。

丁寧に分解して、中身を確認しましょう。

まず、冒頭と文末をつなげると、次のようになります。

この要領は、有害物質等による地下水汚染等がみられることにかんがみ、(中略)これら井戸等について総合的な衛生の確保を図ることを目的とする。

すなわち、

  • 有害物質等による地下水汚染がみられ、
  • このままでは危険(リスク)があるので、
  • その危険(リスク)を低減するために
  • 総合的な【衛生の確保】を図るために、
  • 本要領をつくった、

ということです。

省略した部分に書かれていることは、次の2つです。

  1. 対象とする「井戸等」の中身
  2. 具体的な対策の中身

そしてこられは、次のように説明されています。

1)対象とする「井戸等」の中身

  • 水道法等で規制を受けない水道
  • 水源は次のもの
    • 飲用に供する井戸等
    • 他の水道から供給を受ける水

すなわち、

  • 水道法等の規制対象でなく、かつ
  • 飲用として利用される水、

ということです。

よって、湧水としての地下水利用や雨水利用についても、飲用として利用されるのであれば、本要領における「井戸等」に含まれることになります。

2)具体的な対策の中身

  • 適正管理
  • 水質に関する定期的な検査
    • 汚染時における措置
    • 汚染防止のための対策

目的の中身を丁寧に確認したことで、本要領の全体像を掴むことができました。

実施主体と対象施設

目的の次に書かれているのが、本要領に基づく対策の実施主体と対象施設です。

結論を先取りすれば、実施主体は都道府県または市町村、対象施設は、法律の規制を受けない飲用水道(=「飲用井戸等」)、です。

順に見ていきましょう。

■実施主体

本要領の該当部分は、やや持って回った書き方がされていますが、要するに

  • 都道府県または市町村

だと理解すればよいでしょう。

これは、本要領を作成したのが国であり、これを技術的助言として発出した宛先が地方自治体の首長であることとも整合します。

また、本要領の目的が衛生の確保であることから、その責任主体を自治体として設定することにもも合点がいきます。

一方で、本要領は法的拘束力のないガイドラインです。

であるからこそ、対象施設である飲用井戸等を実質的に管理し、または利用する全ての人が、自らを実施主体であるとして、本要領を扱うことは、大いに望まれることだと言えます。

●対象施設

目的で「井戸等」と表現しているものを、ここでは「飲用井戸等」と改め、再定義しています。

よって、本稿でも以後は「飲用井戸等」として書き進めます。

本要領によれば、「飲用井戸等」とは

  • 水道法その他法律の規制を受けず、かつ次のいずれかに該当するもの
    1. 一般飲用井戸
      居住者に飲用水を供給する給水施設
    2. 業務用飲用井戸
      事業所等に飲用水を供給する給水施設
    3. 小規模貯水槽水道
      水道水を水源とする小規模貯水槽がある施設

ここで要注意なのは、総じては「飲用井戸等」と定義している一方で、語尾に「等」付けずに、1】2】それぞれを「一般飲用井戸」「業務用飲用井戸」と呼称していることです。

定義からも明らかなように、「一般飲用井戸」と「業務用飲用井戸」には、井戸以外も含まれます。

衛生確保の対策

さて、いよいよ衛生確保の対策です。

その内容は、次のとおりに構成されています。

  1. 実体の把握
  2. 管理
  3. 水質検査
  4. 汚染が判明した場合の措置
  5. 汚染された飲用井戸等に対する措置

4〉5〉の関係は、4〉が初動の対処、5〉が実質的な対処、です。

1つずつ見ていきましょう。

■ 1〉実体の把握

本要領では実施主体に次の3つの【実体】の把握を求めています。

  • (飲用井戸等の水源になり得る)地下水の汚染状況
  • 飲用井戸等の設置場所、設置数、水質の状況
  • 飲用井戸等の管理状況

なお、これら実体の把握に伴い、飲用井戸等を設置者(予定者も含む)、管理者および使用者に対する次の措置も実施主体に求めています。

  • 飲用井戸等の利用に関する必要な啓発
  • 管理状況等に関する報告の請求

「なるほど、確かに」といった感じです。

■ 2〉管理

本要領では、実施主体に対して、掲示する基準に従って管理するように、設置者等を指導することを求めています。

自治体以外の人であれば、これを指導を受ける立場として、読み換えることができます。

本要領に掲示されている管理の基準は、次のとおりです。

  1. 飲用井戸等やその周辺に、みだりに人や動物が立ち入れないような措置をとること。
  2. 井戸等の設備やその周辺が清潔に保たれるように定期的に点検し、汚染源から防護する措置をとること。
  3. 飲用井戸等を新設するときは、設置場所や設備等に十分に配慮し、汚染防止に努めること。また利用開始前には、水道法に準じた水質検査を実施し、これに適合していることを確認すること。

■ 3〉検査

本要領では、実施主体に対して、掲示する基準に従って検査するように、設置者等を指導することと併せて、1〉で把握した周辺の地下水の水質から、定期的に検査すべき項目を明示することを求めています。

ただし、法的拘束力がないことから、全ての自治体において、この検査項目が妥当性をもって明示されているとは限りません。

本要領に掲示されている検査の基準は、次のとおりです。

  1. 飲用井戸等は、次の内容で定期及び臨時の水質検査を行うこと。
    • 「水質基準項目」の中の次の項目
      • 一般細菌
      • 大腸菌
      • 亜硝酸態窒素
      • 硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素
      • 塩化物イオン
      • 有機物(全有機炭素(TOC))の量
      • ph値
      • 臭気
      • 色度
      • 濁度
      • 有機溶剤その他の項目のうち、周辺の水質検査結果等から必要と判断されるもの
  2. 水質検査は毎年1回以上行うこと。異常が認められたら臨時で検査を行うこと。
  3. 水質検査は、水道法に規定する地方公共団体の機関または厚生労働大臣の登録を受けた者に依頼すること

■ 4〉汚染が判明した場合の措置

本要領では飲用井戸等の設置者等に、次のことを求めています。

供給する水が人の健康を害するおそれがあることを知った時、または検査の結果、水質基準を超える汚染が判明した時は、

  • 直ちに給水を停止すること
  • 利用者にその旨を周知すること
  • 保健所等へ連絡し指示を受けること

■ 5〉汚染された飲用井戸等に対する措置

本要領では、実施主体に、次のことを求めています。

4〉の汚染を把握した場合には、

  • その原因を調査すること
  • 必要な措置をとること

条例など自治体における取り組み

繰り返し確認してきたとおり、本要領自体に法的な拘束力はありません。

しかしながら、本要領に従った上で、その実施にあたり、条例等を整備している自治体もあります。

この場合、その条例の規定によっては、設置者等に何らかの義務が発生していることもあり得ます。

ちなみに熊本市では、該当する条例こそありませんが、「熊本市小規模受水槽水道及び飲用井戸の衛生管理に関する指導要綱」を作成し、設置の報告を求めるとともに、管理や検査の実施を啓発・指導しています。

また、必要な水質検査の項目については、地域によって異なることから、
「市保健所に問い合わせてほしい」
としています。

まとめると、(管理者を含む)飲用井戸等の設置者等は、次のことが求められると言えます。

  • 供給し、利用される水の安全を担保すること。
  • そのために必要な管理上の措置や検査を確実に行うこと。
  • 設置について自治体に届け出ること。
  • 異常や危険が認められるときは、供給や利用の停止、その周知および報告を直ちに行い、指示を仰ぐこと。

さて、これでようやく、「災害時地下水利用ガイドライン」そのものを読むための準備が整いました。

次週もお楽しみに。

◇今日の気づき

供給し、利用される水の安全を担保する
必要な管理上の措置や検査を確実に行う

◇引用・参考文献一覧

内閣官房水循環政策本部事務局 国土交通省水管理・国土保全局水資源部(2025年3月17日)「災害時地下水利用ガイドライン ~災害用井戸・湧水の活用に向けて~」
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/content/001879780.pdf

厚生省生活衛生局長(令和元年10月17日)「飲用井戸等衛生対策要領の実施について(生食発1017第2号)」
https://www.mlit.go.jp/common/830005546.pdf

厚生労働省健康局長(平成16年1月22日)「飲用井戸等衛生対策要領の改正について」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta6161&dataType=1&pageNo=1

熊本市(2025年1月20日)「飲用井戸について」
https://www.city.kumamoto.jp/kiji0033446/index.html

◇この文章の入口(参考)

制度・実務(右下)や整理(右上)から、意味がほどける場所(左上)へ


この文章は、
判断や結論に入る手前の、話の地面に立ち戻る中で書かれています。

この文章を読んで、

話が噛み合わない感触や結論に入る前の違和感

が残るときは、それを急いで解消しなくても構いません。

そのための場所を、別に置いています。

結論の前に